
【はじめに】空き家問題は「全国的な構造課題」へ

日本における空き家問題は、もはや一部地域の課題ではなく、全国的な構造問題へと発展しています。
少子高齢化、都市部への人口集中、住宅供給の過剰といった要因が複合的に絡み合い、空き家の増加を招いています。
この問題は、防災・防犯・景観・衛生といった生活環境への影響だけでなく、不動産市場や地域経済にも深刻な影響を及ぼしています。
本記事では、2025年時点での最新動向を踏まえ、空き家問題の実態と、それが不動産戦略に与える影響について深く掘り下げていきます。
【データで見る】最新統計

総務省が2024年4月に発表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点での全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しました。
これは、2018年の849万戸(13.6%)から51万戸の増加となります。
1978年の268万戸(7.6%)と比較すると、約3.35倍に増加しており、空き家問題の深刻化が改めて浮き彫りになっています。 (総務省 令和5年住宅・土地統計調査)
空き家の内訳と「狭義の空き家」の増加傾向

空き家は以下の4つに分類されます
- 賃貸用の空き家
- 売却用の空き家
- 二次的住宅(別荘など)
- その他の空き家(賃貸・売却用および二次的住宅を除く)
この中で、特に問題視されているのが「その他の空き家」で、いわゆる「狭義の空き家」と呼ばれるものです。
2023年時点での「狭義の空き家」は385万戸で、2018年の349万戸から36万戸増加しています。
これらの多くは、長期間放置され、腐朽や破損が進んでいる状態で、地域の安全や景観に悪影響を及ぼしています。
【地域別傾向】西日本や中山間地域で高い空き家率

都道府県別に見ると、空き家率が特に高いのは以下の地域です。
| 県 | 徳島県 | 和歌山県 | 山梨県 | 鹿児島県 | 高知県 |
| % | 21.2% | 21.2% | 20.5% | 20.4% | 20.3% |
これらの地域は、人口減少や高齢化が進行しており、空き家の増加が顕著です。
一方で、東京都や神奈川県などの都市部では空き家率が低く、地域間での格差が広がっています。
【将来予測】2043年に空き家率25%、腐朽・破損空き家が倍増

野村総合研究所の予測によると、2043年には空き家率が約25%に達する見込みです。
特に一戸建て住宅の空き家率が上昇し、腐朽・破損が進んだ空き家が増加すると予測されています。
2023年時点での腐朽・破損ありの空き家は約82万戸でしたが、2043年には165万戸に倍増する見込みです。
このような空き家の増加は、地域の安全性や景観に悪影響を及ぼすだけでなく、不動産市場にも深刻な影響を与える可能性があります。
【法制度と政策動向】相続登記義務化と税制改正

空き家問題への対策として、政府は以下のような法制度や政策を導入しています。
相続登記の義務化:2024年4月から、不動産の相続登記が義務化され、相続人は3年以内に登記を行う必要があります。
これにより、所有者不明の空き家の発生を防ぐことが期待されています。
空家等対策の推進に関する特別措置法の改正
2023年12月に施行された改正法では、管理が不十分な空き家に対して、固定資産税の住宅用地特例の対象外とするなど、所有者に対する責任が強化されました。
これらの施策により、空き家の適切な管理や活用が促進されることが期待されています。
【不動産戦略への影響】投資・再生・出口戦略の再構築

空き家問題の深刻化は、不動産業界にも大きな影響を与えています。
特に、以下のような戦略の再構築が求められています
空き家の再生・活用:リフォームやリノベーションを通じて、空き家を賃貸物件やシェアハウス、民泊施設などに転用する動きが広がっています。
空き家バンクの活用:自治体が運営する空き家バンクを通じて、空き家の売買や賃貸を促進し、地域の活性化を図る取り組みが進められています。
投資戦略の見直し:空き家の増加に伴い、不動産投資家は物件の選定やリスク管理、出口戦略の見直しが求められています。
これらの取り組みにより、空き家を「負債」から「資産」へと転換することが可能となります。
【まとめ】空き家を「負債」から「資産」へ転換するために

空き家問題は、今後ますます深刻化することが予想されます。
しかし、適切な管理や活用を行うことで、空き家は単なる“社会的負債”ではなく、再び資産としての機能を持たせることが可能です。
政府の法改正や制度整備によって、所有者責任が明確化され、放置空き家をなくす方向に進んでいます。
これからの時代、不動産所有者や投資家には、以下の3つの視点が求められます。
✅ 今後の空き家活用に必要な視点
所有者意識の転換
「使わないから放置」ではなく、「どう使うか・誰に引き継ぐか」の視点を持つ。 出口戦略を含めた不動産設計 購入時点で「将来的に売れるか・貸せるか」を見据えた目利きが重要。
地域資産としての共生的活用
住居用途だけでなく、シェアオフィス・子育て支援拠点・観光施設など、地域課題と連動した用途設計が今後は鍵になる。
空き家を“負の遺産”ではなく、“地域の可能性を拓くきっかけ”に変えていく――
そうした視点が、これからの不動産戦略には不可欠です。



